熟年再婚で年金がどう変わるかは、「遺族年金を受けているか」で大きく分かれます。遺族年金は再婚すると受給権がなくなり、籍を入れない事実婚でも同じようになくなります。 一方で、自分の加入記録で受け取る老齢年金はそのままで、相手によっては加給年金が加わることもあります。
「再婚したら暮らしていけなくなるのでは」「年金の話をどう切り出せばいいのか」。そんな不安を持つ方に向けて、この記事では、再婚で失う年金・増える年金・確かめる手順をまとめました。
熟年再婚で年金はどうなる?最初に知りたい3つの結論

熟年再婚と年金の関係は、3つの結論を押さえると見通しがよくなります。細かな条件は人によって違うため、最後は年金事務所で確かめるのが安心です。
遺族年金は再婚で受給権がなくなる
日本年金機構は、遺族年金を受けている人が結婚したとき(内縁関係を含む)は、年金を受ける権利がなくなると案内しています。 前の配偶者を亡くして遺族年金を受けている人にとって、最も大きな変化です。
自分の老齢年金は再婚の影響を受けにくい
結婚で受給権がなくなると案内されているのは遺族年金で、自分が保険料を納めて受け取る老齢年金とは別のものです。 ご自身の老齢年金の見込額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。
相手によっては加給年金が加わる
厚生年金に20年以上加入した人が65歳になった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者がいると、加給年金が加わることがあります。 年の差のある熟年再婚では、確かめておきたい制度です。
遺族年金を受けている人が熟年再婚するとどうなる?

遺族年金を受けている人が再婚すると、その遺族年金は受けられなくなります。手続きの期限もあるため、再婚の前に知っておきたいところです。
結婚した日から受給権がなくなる
遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給権は、本人が結婚したときになくなります。 直系血族や直系姻族以外の人の養子になったときも同じです。
一度なくなった受給権は、その後に再婚相手と離婚しても元に戻らないと考えておくのが安心です。
失権届は10日・14日以内に出す
結婚したら、遺族年金失権届を、遺族厚生年金は10日以内、遺族基礎年金は14日以内に、年金事務所か街角の年金相談センターへ出す必要があります。 期限が短いため、婚姻届を出す日が決まったら、同じ時期に失権届の準備も進めておくと安心です。
死別からの再婚で先に考えておきたいこと
配偶者を亡くした方の再婚では、年金だけでなく、前の配偶者の家族や相続のことも気になるものです。 死別からの再婚で気をつけたいことは、死別からの再婚は難しい?で詳しく紹介しています。
熟年再婚で失う遺族年金はいくら?65歳以上は差額で考える

再婚で失う遺族年金の額は、65歳の前と後で考え方が変わります。65歳以上の方は、思っているより少ないこともあります。
65歳以上は自分の老齢厚生年金が先に支給される
65歳以上で、遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金の両方を受け取れる人は、老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金はその分が支給停止になります。 つまり、遺族厚生年金として実際に受け取っているのは、自分の老齢厚生年金を上回る部分だけです。
仮の数字で計算してみる
たとえば、遺族厚生年金の額が年90万円、自分の老齢厚生年金が年60万円の人なら、65歳以降に遺族厚生年金として受け取っているのは差額の年30万円です。 再婚で失うのは、この30万円の部分になります。
これはあくまで考え方の例です。実際の額は、前の配偶者と自分の加入記録で変わるため、年金事務所で今の内訳を確かめておくのがおすすめです。
65歳前は遺族年金の額をそのまま失う
65歳前に再婚する場合は、自分の老齢年金がまだ始まっていないことが多く、遺族年金の額をそのまま失うことになります。 40〜65歳の妻に加わる中高齢寡婦加算(年635,500円)を受けている場合は、その分もなくなります。
再婚の時期によって失う額が変わるため、急がない場合は、時期を相手と相談しておくのも一つの方法です。
熟年再婚で増える年金はある?加給年金と振替加算

熟年再婚では、年金が増える場合もあります。代表的なのが、年下の配偶者がいるときの加給年金です。
加給年金は65歳時点の配偶者が対象
加給年金は、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。 令和8年4月からの配偶者分は年243,800円で、特別加算を含めると最大で年423,700円です。
ここでいう「生計を維持」は、生計を同じくしていて、配偶者の前年の収入が850万円未満であることなどが目安です。加算を受けるには届け出が必要です。
加給年金が終わる・止まるとき
配偶者が65歳になると加給年金は終わり、離婚や死亡で生計を維持しなくなったときも終わります。 配偶者自身が厚生年金20年以上の老齢厚生年金を受け取る権利を持っている場合は、支給が止まります。
65歳を過ぎてから再婚した場合の扱いは、日本年金機構のページに明記がありません。年の差のある再婚を考えている方は、年金事務所で一度確かめておくと安心です。
仮の数字で見る加給年金の合計
たとえば、厚生年金に20年以上加入した夫が65歳のとき、5歳年下で収入の条件を満たす妻がいれば、妻が65歳になるまでの最大5年間、加給年金が加わります。 年423,700円(特別加算込みの上限)で計算すると、5年で最大約212万円です。
特別加算を含む額は条件によって変わり、妻に20年以上の老齢厚生年金の受給権があれば止まります。実際に受け取れる額は、年金事務所で確かめておくのがおすすめです。
振替加算は昭和41年4月1日以前生まれが対象
振替加算は、配偶者の加給年金が終わったあと、配偶者自身の老齢基礎年金に加算されるものです。 対象は大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた人などに限られます。
熟年再婚した相手が亡くなったら遺族年金はもらえる?

熟年再婚の相手が先に亡くなった場合、条件を満たせば、新しい配偶者として遺族年金を受け取れることがあります。ただし、再婚後の期間や年齢で変わる点もあります。
遺族厚生年金は生計維持が条件
亡くなった配偶者が厚生年金に加入していた場合、生計を維持されていた配偶者は遺族厚生年金を受け取れることがあります。 年金額は、亡くなった人の報酬比例部分の4分の3が基本です。
子のいない夫が受け取れるのは、妻が亡くなったときに55歳以上の場合に限られ、受け取り始めるのは60歳からです。
寡婦年金は婚姻10年以上が条件
国民年金だけに加入していた夫が亡くなったときの寡婦年金は、10年以上続けて婚姻関係にあったことが条件です。 事実婚の期間も含まれますが、熟年再婚で結婚して間もない場合は、受け取れないこともあります。
2028年4月から遺族厚生年金が見直される予定
厚生労働省によると、2028年4月から、60歳未満で配偶者を亡くした子のいない人の遺族厚生年金は、原則5年間の有期給付に見直される予定です。 60歳以上で配偶者を亡くした人や、施行前から受給している人は、今の制度が維持されます。
50代で再婚を考えている方は、この見直しも頭に入れておくと安心です。
事実婚なら年金は守れる?熟年再婚との違い

「籍を入れなければ遺族年金はもらい続けられる」と考える方もいますが、そうではありません。事実婚と法律婚の違いを、年金とお金の面で並べました。
| 項目 | 法律婚(再婚) | 事実婚 |
|---|---|---|
| 今の遺族年金 | なくなる | なくなる |
| 相手の遺族年金 | 対象になりうる | 対象になりうる |
| 相続人 | なる | ならない |
事実婚でも遺族年金はなくなる
遺族年金の受給権がなくなる「結婚」には、内縁関係も含まれます。 婚姻届を出していなくても、夫婦として一緒に暮らしていれば、遺族年金は受けられなくなります。
事実婚を選ぶ場合も、失権届の要否や時期は年金事務所に相談しておくのが安心です。
相手の遺族年金は事実婚も対象になりうる
日本年金機構の遺族年金ガイドでは、遺族年金を受け取れる配偶者に内縁の配偶者を含むとしています。 ただし、事実婚の関係を示す申立書などを求められることがあり、法律婚より手続きの手間は増えます。
相続人になれるのは法律婚だけ
国税庁の説明では、内縁関係の人は相続人に含まれません。 一緒に暮らした家や預金を残したい場合は、遺言などの準備を専門家に相談しておくと安心です。籍を入れない暮らし方については、別居婚のメリット・デメリットでも紹介しています。
熟年再婚の年金のほかに確かめたいお金は?扶養・税金・相続

熟年再婚では、年金のほかにも、健康保険の扶養や税金、相続が変わります。
健康保険の扶養
健康保険の被扶養者になれる年収の目安は、60歳以上の人は180万円未満です。 配偶者には事実婚も含まれ、同居していなくても認められることがあります。
配偶者控除
所得税の配偶者控除の対象は民法上の配偶者で、内縁関係の人は含まれません。 事実婚を選ぶ場合は、税金の面で法律婚と扱いが違う点を知っておきたいところです。
相続と子どもへの説明
再婚すると新しい配偶者が相続人になり、配偶者と子が相続人の場合の法定相続分は2分の1ずつです。 それぞれの子どもへの説明は、再婚の前に済ませておくのが安心です。
再婚前の準備は、50代の再婚は珍しくないや50代の結婚は珍しくない|お金・年金・相続でも詳しく紹介しています。
二人の年金で暮らせるかの目安
令和6年度末の厚生年金の平均月額は、65歳以上の男性で約17.3万円、女性で約11.5万円です。 総務省の家計調査(2025年平均)では、65歳以上の単身で働いていない世帯の消費支出は月約14.8万円でした。
一人ずつでは年金だけで足りない月があっても、二人で住まいを一つにすると、家賃や光熱費などを分け合えます。再婚後の年金の合計と、暮らしにかかるお金を並べてみると、相手とも話しやすくなります。
熟年再婚の前に年金を確かめる手順は?

熟年再婚の前に、次の順番で年金を確かめておくと、相手とも話しやすくなります。
1. 自分の年金の内訳を確かめる
まず、ねんきん定期便やねんきんネットで、自分の老齢年金の見込額を確かめます。 遺族年金を受けている方は、年金の振込通知書などで、遺族年金の額も確かめておきます。
2. 年金事務所で再婚後の変化を聞く
年金事務所や街角の年金相談センターで、再婚したら何がなくなり、何が加わるかを聞いておくのがおすすめです。 聞きたいことを先にメモしておくと、限られた相談時間でも話が進みます。
3. 相手と暮らしのお金を話し合う
再婚後の年金の合計額がわかったら、住まいや生活費の分け方を相手と話し合います。 年金生活が近い年代では、一緒に暮らしてから話すより、先に話しておく方が安心です。
結婚を前提に相手を探している方は、結婚相談所という選択肢もあります。
熟年再婚の年金に関するよくある質問
Q. 熟年再婚すると自分の老齢年金は減りますか?
A. 結婚で受給権がなくなると案内されているのは遺族年金です。ご自身の加入記録で受け取る老齢年金の見込額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。
Q. 籍を入れなければ遺族年金はもらい続けられますか?
A. もらい続けられません。遺族年金の受給権がなくなる結婚には、内縁関係(事実婚)も含まれます。
Q. 再婚相手と離婚したら、前の配偶者の遺族年金は戻りますか?
A. 結婚で一度なくなった受給権が、離婚によって戻ることはないと考えておくのが安心です。くわしくは年金事務所で確かめておくのがおすすめです。
Q. 熟年再婚の失権届はいつまでに出しますか?
A. 結婚した日から、遺族厚生年金は10日以内、遺族基礎年金は14日以内です。提出先は年金事務所か街角の年金相談センターです。
Q. 熟年再婚で加給年金を受けるには手続きが必要ですか?
A. 必要です。日本年金機構は、加給年金を受けるには届け出が必要と案内しています。条件に当てはまるかも含めて、年金事務所で確かめておくと安心です。
Q. 年金のことを再婚相手にどう切り出せばいいですか?
A. 「これからの暮らしのお金を一緒に考えたい」と、二人の生活の話として切り出すのがおすすめです。お互いの年金の見込額を見せ合うと、話が具体的になります。
まとめ|熟年再婚の年金は「失うもの・増えるもの」を先に確かめれば怖くない

熟年再婚では、遺族年金が受けられなくなり、事実婚でも同じです。一方で、自分の老齢年金はそのままで、相手によっては加給年金が加わることもあります。65歳以上の方は、失うのが遺族厚生年金の差額だけ、ということもあります。
再婚で失う年金と増える年金を先に確かめておけば、お金の不安に振り回されずに、これからの暮らしを選べます。 まずは年金事務所で今の内訳を聞くところから始めてみませんか。
同年代の相手と気軽に知り合いたい方には、交流会もおすすめです。



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