60代の再婚で後悔しやすいのは、気持ちのすれ違いより、遺族年金・相続・住まいといったお金と暮らしの決まりごとです。この3つは入籍前に確かめておけば防げることが多く、準備をした60代の再婚は前向きに選べる選択肢です。
2024年に60代で結婚した人は男性6,232人・女性3,354人で、その8割以上が再婚でした。60代の再婚はめずらしくありませんが、若いころの結婚とは確かめることが違います。
「子どもに反対されたら」「年金が減ったら」と迷っている方に向けて、この記事では60代の再婚で後悔しやすい6つの場面と、結婚・事実婚・別居婚で年金と相続がどう変わるかの比較表をまとめました。
60代の再婚で後悔する人は多い?数字で見る熟年再婚

60代の再婚は、30年前よりずっと増えています。一方で、後悔した人の割合を示す公的な統計はありません。
60代で結婚した人の8割以上が再婚
国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集2026によると、2024年に60代で結婚した人は男性6,232人・女性3,354人で、そのうち再婚は男性約85%、女性約88%でした(表6-3・6-5から編集部が計算)。1990年と比べると、60代の結婚は男性で約2.4倍、女性で約3.2倍です。
同じ資料では、2020年に死別・離別した60〜64歳の人1,000人のうち、1年間に再婚したのは男性7.97人・女性2.51人でした。再婚を選ぶ人は、全体から見れば少数派でもあります。
「後悔した人の割合」は統計にない
60代の再婚で後悔した人が何割いるかを示す公的な統計は、確認できませんでした。ネットで見かける「後悔した人は○割」という数字は、出典がはっきりしないものが多いので、この記事では使いません。
その代わりに、この記事では制度の上で「知らなかった」とつまずきやすい点を取り上げます。後悔の多くは、入籍前に確かめていれば避けられた場面だと編集部は考えています。
50代の再婚とは確かめることが違う
60代の再婚では、年金を受け取り始める時期と、子どもが成人して独立している時期が重なることが多くなります。そのため、年金・相続・住まいの3つが、50代の再婚より大きな話題になります。
50代までの結婚で後悔しやすい点は、50代の結婚で後悔しやすい6つのこと|再婚も含めて入籍前に確かめたいチェックリストにまとめています。
60代の再婚で後悔しやすいことは?遺族年金が止まる

配偶者を亡くした方が再婚するときに、いちばん知っておきたいのが遺族年金です。籍を入れたあとで知ると、取り返しがつきません。
再婚すると遺族年金の受給権はなくなる
日本年金機構によると、遺族年金を受けている人が結婚すると、受給権はなくなります。これは籍を入れない事実婚(内縁)でも同じです。
受給権がなくなったら、遺族基礎年金は14日以内、遺族厚生年金は10日以内に失権の届け出が必要です。入籍の日が決まったら、届け出の準備もあわせて進めておくと慌てずにすみます。
入籍前に年金事務所で金額を確かめる
再婚を考え始めたら、自分が受け取っている遺族年金と、自分の老齢年金の見込額を、年金事務所やねんきんネットで確かめておくのがおすすめです。再婚後の家計を、数字で考えられるようになります。
遺族年金がなくなる分を、二人の収入でどう補うかを話し合っておくと、あとで「こんなはずでは」と感じにくくなります。死別からの再婚については、死別からの再婚は難しい?本人と付き合う側の不安、遺族年金・相続まで先に知りたいことでもくわしく紹介しています。
60代の再婚で相続はどう変わる?子どもとの関係

60代の再婚で家族ともめやすいのが、相続です。籍を入れると、相続人の顔ぶれと取り分が変わります。
新しい配偶者は常に相続人になる
国税庁の案内では、亡くなった人の配偶者は常に相続人となり、子どもがいる場合の法定相続分は配偶者2分の1、子ども全員で2分の1です。再婚相手は、籍を入れた日から配偶者として相続人になります。
前の結婚の子どもから見ると、親の遺産の半分が再婚相手に行く可能性があるということです。子どもが再婚に慎重になる理由の一つは、ここにあります。
遺言で分け方を決められるが遺留分がある
遺言を書けば遺産の分け方を自分で決められますが、子どもや配偶者には、法定相続分の2分の1にあたる遺留分が民法で認められています。遺言で誰か一人にすべてを残しても、ほかの相続人は遺留分を求められます。
自筆の遺言書は、法務局に1通3,900円で預けられます。再婚する前に、子どもと再婚相手の両方に何を残したいかを考えておくのがおすすめです。
子どもには入籍前に話しておく
子どもに再婚を伝えるときは、気持ちの話だけでなく、相続をどう考えているかもあわせて伝えると、受け止めてもらいやすくなります。遺言を書くつもりがあることを話すだけでも、子どもの不安はやわらぐと思います。
相手と子どもが顔を合わせる機会を、入籍の前につくっておくのも一つの方法です。
60代の再婚で住まいはどうする?相手の家に住むときの注意

60代の再婚では、どちらかの持ち家に住むことが多くなります。住まいの決め方は、相続ともつながっています。
相手の家に住むなら配偶者居住権を知っておく
相手名義の家に住む場合、相手が亡くなったあと、家は相続人のものになります。2020年4月1日に始まった配偶者居住権は、残された配偶者が家賃の負担なくその家に住み続けられる権利で、遺言や遺産分割の話し合いで決めます。
この権利がなくても、配偶者短期居住権で最低6か月は無償で住み続けられます。長く住み続けたいなら、遺言で配偶者居住権を残してもらうよう話し合っておくと安心です。
二つの家をどうするかを先に決める
二人とも持ち家がある場合は、どちらに住むか、使わない家を貸すか売るか、子どもに譲るかを入籍前に話し合っておくのがおすすめです。決めないまま同居を始めると、片方の家の管理が負担になることがあります。
住み慣れた家を手放したくない場合は、籍を入れて別々に暮らす別居婚という形もあります。
60代の再婚で相手の家族とどう付き合う?連れ子と親族

60代の再婚では、相手にも成人した子どもや年老いた親がいることが多くなります。法律上の関係を知っておくと、付き合い方を決めやすくなります。
相手の子どもとは養子縁組しないと親子にならない
再婚相手の子どもとは、養子縁組をしなければ法律上の親子関係はできず、自分の相続人にもなりません。法務省によると、養子縁組は市区町村への届出で効力が生じます。
養子縁組をしていない相手の子どもに遺言で財産を残すと、相続税が2割加算されます(国税庁 No.4157)。誰に何を残すかは、養子縁組をするかどうかとあわせて考えるのがおすすめです。
相手の親の介護をどうするか話しておく
民法で扶養の義務があるのは、原則として直系血族と兄弟姉妹なので、再婚相手の親の介護をどこまで手伝うかは、二人と家族の話し合いで決めることになります。入籍前に、相手の親の暮らしや、介護が必要になったときの考えを聞いておくと安心です。
自分の親の介護がまだ続いている場合も、同じように相手に伝えておくと、すれ違いを防げます。
60代の再婚で介護やお金の感覚のずれは?

60代の再婚では、健康と家計の話が、若いころより身近になります。気持ちが盛り上がっているときこそ、話しておきたいことです。
相手の介護が早く来ることもある
年の差がある再婚や、相手に持病がある場合は、結婚して数年で介護が始まることもあります。どちらかが介護を担うことになったとき、どこまで自分たちで行い、どこから介護サービスを使うかを話しておくと、負担が一人に偏りにくくなります。
介護の不安があるからといって、再婚をあきらめる必要はないと思います。不安を言葉にして共有できる相手かどうかが、大切な見どころです。
家計の分け方を決めておく
生活費をどう分けるか、それぞれの貯金や年金をどう管理するかを、入籍前に決めておくのがおすすめです。長く一人で家計を回してきた60代ほど、お金の使い方の違いに戸惑いやすくなります。
生活費は共通の口座から、個人の貯金はそれぞれで管理する、といった分け方にすると、お互いの子どもへの気がねも小さくなります。
60代の再婚で後悔しないためには?入籍前のチェックリスト

後悔の多くは、入籍前に確かめることで防げます。60代の再婚で確かめておきたいことを、チェックリストにまとめました。
入籍前に確かめたい7つのこと
次の7つを二人で確かめておくと、60代の再婚で「知らなかった」と後悔する場面を減らせます。すべてを一度に決める必要はなく、話しやすいものから始めれば十分です。
- 遺族年金を受けているか、再婚でいくら減るか
- 二人の老齢年金の見込額と、毎月の生活費
- 子どもに残したい財産と、遺言を書くかどうか
- どちらの家に住むか、使わない家をどうするか
- 相手の子どもと養子縁組をするかどうか
- 親の介護や自分の介護をどう考えるか
- 籍を入れるか、事実婚や別居婚にするか
迷ったら専門家に相談する
相続や年金の計算が複雑なときは、年金事務所や、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。再婚前に一度相談しておくと、子どもに説明するときの材料にもなります。
二人で相談に行くこと自体が、お互いの考えを知るよい機会になると思います。
60代の再婚は籍を入れるべき?結婚・事実婚・別居婚の違い

60代の再婚では、籍を入れる結婚だけでなく、事実婚や別居婚を選ぶ人もいます。形によって、年金と相続の扱いが変わります。
結婚・事実婚・別居婚の違い
籍を入れるかどうかで、相続人になるかどうかが変わり、遺族年金は籍を入れなくても事実婚で受給権がなくなります。主な違いは次のとおりです。
| 形 | 相続 | 遺族年金を受けている人 |
|---|---|---|
| 結婚(同居) | 配偶者は常に相続人 | 受給権がなくなる |
| 別居婚 | 配偶者は常に相続人 | 受給権がなくなる |
| 事実婚 | 相続人にならない | 受給権がなくなる |
事実婚でも遺族年金の受給権がなくなる点は、見落としやすいところです。籍を入れないことを選ぶなら、遺言で財産を残す方法をあわせて考えておくと安心です。
別居婚の法律や税金は、別居婚のメリット・デメリット|40〜60代の再婚で知りたい法律・税金・社会保険でくわしく紹介しています。
形は二人で決めてよい
どの形を選んでも、二人が納得していればそれが正解の形だと思います。籍を入れることにこだわらず、まずは一緒に過ごす時間を増やしてから決める人もいます。
まだ相手が決まっていない方は、同年代と話せる場で、自分に合う関係の形を考えてみるのもおすすめです。
60代の再婚の後悔に関するよくある質問
Q. 60代で再婚して後悔する人は多いですか?
A. 後悔した人の割合を示す公的な統計はありません。後悔しやすいのは遺族年金・相続・住まいの決まりを知らずに入籍した場合が多いので、入籍前に確かめておくと防ぎやすくなります。
Q. 60代で再婚すると遺族年金はどうなりますか?
A. 結婚すると受給権がなくなり、事実婚でも同じです。遺族基礎年金は14日以内、遺族厚生年金は10日以内に届け出が必要です。
Q. 再婚相手と前の結婚の子どもの相続はどうなりますか?
A. 子どもがいる場合、法定相続分は再婚相手が2分の1、子ども全員で2分の1です。遺言で分け方を決められますが、子どもには遺留分があります。
Q. 相手の家に住んでいて、相手が亡くなったら住み続けられますか?
A. 配偶者短期居住権で最低6か月は無償で住めます。長く住み続けたいなら、遺言や遺産分割で配偶者居住権を決めておく方法があります。
Q. 60代の再婚で子どもに反対されたらどうすればいいですか?
A. 相続をどう考えているかを具体的に伝え、相手と子どもが会う機会をつくるのがおすすめです。遺言を書くつもりがあることを伝えるだけでも、不安がやわらぐことがあります。
Q. 60代の再婚は籍を入れたほうがいいですか?
A. 籍を入れると相手は相続人になり、事実婚では相続人になりません。どちらが合うかは、年金・相続・住まいの事情を確かめてから二人で決めるのがおすすめです。
まとめ|60代の再婚は後悔の種を先に確かめれば、前向きに選べる

60代の再婚で後悔しやすいのは、遺族年金・相続・住まいといった決まりごとです。遺族年金は事実婚でも止まること、新しい配偶者は常に相続人になること、相手の家に住むなら配偶者居住権を考えておくことを、入籍前に確かめておけば、後悔の多くは防げます。
2024年には60代で約9,600人が結婚し、その8割以上が再婚でした。準備をしておけば、60代の再婚はこれからの暮らしを支え合う心強い選択肢になると思います。まずは同年代と話せる場で、新しい出会いを探してみませんか?



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